日本酒・焼酎の基礎知識

日本酒を知る

 温度にこだわる

温度を変えると味わいが変わります。それぞれのお酒にあった温度やご自分の好みを探るのも楽しみ方のひとつです。

温める(燗) 30~55度 広がる酒の味を楽しむ 純米酒・本醸造酒
常温(冷や) 20~25度 じっくり時間をかけて飲む 純米酒・吟醸酒
冷やす(冷酒) 5~15度 フルーティな香りや新鮮さを楽しむ 生酒・生貯蔵酒・吟醸酒など

 飲用温度で変わる呼び方の種類

さらに飲用温度によって呼び方が変わります。

呼び方 温度
雪冷え(ゆきびえ) 5度
花冷え(はなびえ) 10度
涼冷え(すずびえ) 15度
冷や(ひや) 20-25度
日向燗(ひなたかん) 30度
人肌燗(ひとはだかん) 35度
ぬる燗(ぬるかん) 40度
上燗(じょうかん) 45度
あつ燗(あつかん) 50度
飛び切り燗
(とびきりかん)
55-60度

 特定名称酒の種類

吟醸酒、純米酒、本醸造酒を「特定名称酒」といい、原料・製造方法の違いを示しています。これらを商品に表示するためには「清酒の製法品質表示基準」に定められた要件を満たしたものに限られます。

特定名称 使用原料 精米歩合 麹米使用割合
吟醸酒 米、米麹、醸造アルコール 60%以下 15%以上
大吟醸酒 米、米麹、醸造アルコール 50%以下 15%以上
純米酒 米、米麹 15%以上
純米吟醸酒 米、米麹 60%以下 15%以上
純米大吟醸酒 米、米麹 50%以下 15%以上
特別純米酒 米、米麹 60%以下又は特別な製造方法 15%以上
本醸造酒 米、米麹、醸造アルコール 70%以下 15%以上
特別本醸造酒 米、米麹、醸造アルコール 60%以下又は特別な製造方法 15%以上

※国税庁「清酒の製法品質表示基準」の概要より抜粋

 精米歩合とは

日本酒とお米

米の中心は澱粉質が多く含まれ、表層部は脂質、ビタミンやたんぱく質が多く含まれています。清酒造りの場合は、ビタミン、たんぱく質、脂質などが多すぎると、日本酒の香味のバランスを崩したり、雑味の原因となるため、玄米の外側を削り取る作業のことです。精米歩合は、原料の重量に対して精米作業を経て残った中心部分の重量の比率を表します。例えば、精米歩合60%以下というのは、玄米の表層部を40%以上削り取り、中心部を60%以下残すということです。一般的な食用米の精米歩合は90%前後となっています。また清酒製造では「米を削る」ではなく、「米を磨く」と言います。

 日本酒度とは

日本酒度計
日本酒の甘口、辛口をみる目安となります。日本酒に含まれる糖分が多いか少ないかを示しています。日本酒に日本酒度計を浮かべて計測します。糖分が多いとマイナスを示し、糖分が少ないとプラスを示します。プラスが大きいほど辛口で、マイナスになるほど甘口を意味します。ただ、日本酒度は比重に対する値であり実際の感じ方は酸度にも影響されるため、そのバランスにより微妙に異なります。

日本酒度 甘辛
+6.0以上 大辛口
+3.5~+5.9 辛口
+1.5~+3.4 やや辛口
-1.4~+1.4 普通
-1.5~-3.4 やや甘口
-3.5~-5.9 甘  口
-6.0以上 大甘口

日本酒度と酸度により日本酒の味わいを図にすると以下のようになります。これはあくまでも目安ですが、日本酒選びの参考にしてください。

日本酒度と酸度のグラフ

 酸度とは

日本酒の味に酸味や旨味をもたらす有機酸(コハク酸、リンゴ酸、乳酸など)の量を表しています。酸度が高いほど、より芳醇な味わいになり、低ければ淡麗な味わいになります。日本酒度が同じであれば酸度の高い酒が辛く感じ、低ければ甘く感じます。

 アミノ酸度とは

酒のコクや旨味のもとになるアミノ酸の量を相対的にあらわす数値です。アミノ酸にはグルタミン酸、プロリン、アラニン、バリン、アルギニン、チロシン、セリン、ロイシンなど約20種類のアミノ酸が含まれています。アミノ酸が多く含まれているお酒は旨味やコクが感じられますが、高くなりすぎると雑味も感じます。アミノ酸が少ないお酒は、あっさりと薄味のお酒に感じられます。

焼酎を知る

 蒸留酒と醸造酒

蒸留酒とは醸造酒を蒸留して作られる酒のことで、スピリッツとも呼ばれます。醸造酒は、酵母によりアルコール発酵させて作る酒で、ワインやシードル、ビール、日本酒などがそうです。一般的に蒸留酒は醸造酒よりもアルコール度数が高いことでも知られています。焼酎は蒸留酒になります。
お酒は酒税法第2条によりアルコール度数が1%以上のものと定められています。

種類 定義 代表的なもの
醸造酒 穀類などの原料を発酵させアルコールを生成させたもの 清酒・ワイン・ビールなど
蒸留酒 醸造酒をさらに加熱・蒸留したもの 焼酎・ウイスキー・ウォッカなど
混成酒 醸造酒や蒸留酒に果実、香辛料、砂糖等を加え、その成分を浸透させたもの 梅酒・みりん・リキュール類など

 焼酎の甲類と乙類

焼酎は酒税法上、製造方法によって甲類と乙類の二種類に分類されています。その他、甲類と乙類をブレンドした焼酎もあります。
「甲類」と「乙類」の大きな違いは蒸留法。蒸留とは、混合物を蒸発させて再び凝縮させることで、成分を分離・濃縮する方法のことです。

種類 定義 アルコール度数 主原料 特徴
甲類 連続蒸留機による蒸留 36%未満 さとうきび、とうもろこし等 原料を糖化して発酵して生まれる醪(もろみ)を連続的に蒸留するため、アルコール純度の高いクリアな味わいになる。一度に大量に造ることができるため、価格もリーズナブルなものが多い。透明で焼酎独特の香りも薄く、酎ハイやレモンサワーなど香りや味を足してアレンジする飲み方に向いている。
乙類 単式蒸留機による蒸留 45%以下 麦、芋、米、そば等 原料となる芋、麦、米などの旨味を引き出し閉じ込めるので、香りが高く、味わいが深い。その手間暇かかる工程と古来より変わらない製法から「本格焼酎」とも呼ばれる。米焼酎、麦焼酎、芋焼酎など、原料によって個性的で特徴のある味わいが楽しめる。一度しか蒸留できず大量に造ることができないため、甲類よりも価格は上がる。焼酎の風味を味わうため、ロックやお湯割り、水割りで楽しむのがおすすめ。
混和焼酎 「甲類」と「乙類」を混合したもので、甲類に風味や香りを足すために乙類をブレンドしたり、乙類のクセを和らげるために甲類をブレンドしたり、両者の特徴をうまく活かしたもの。甲類、乙類、どちらが多いかで呼び名が変わり、甲類が50%以上なら「甲類乙類混和」、甲類が50%未満なら「乙類甲類混和」と表記される。

 本格焼酎について

※以下は、乙類についての説明です。
本格焼酎には必ず穀類またはいも類でつくられた麹を使うことが必須条件。仕込みに使える素材は細かく規定されており、規定以外の素材を使った場合には単式蒸留であっても本格焼酎とは認められません。(酒税法第3条10号により規定)こうした厳格なルールがあるため、原材料などの情報はラベルに細かく示すことが義務付けられています。

 材料について

焼酎の材料は大きく分けて2種類あり「一次もろみ」をつくるための「原料」と、焼酎の風味を決める「主原料」があります。役割がそれぞれ異なり、この素材が混ざり合うことで、より味わい深い焼酎が出来上がります。

原料 一次もろみをつくるための材料

大麦 など
主原料 風味の決め手となるベース
米(米焼酎)

大麦(麦焼酎)

そば(そば焼酎)

いも(いも焼酎) など

 製造工程

大きく分けて4つの工程に分けられます。一般的に蒸留が終わるまでの期間は約1ヶ月です。

  1. 一次もろみをつくる(米などに麹菌を生やして「麹」をつくる。次に「麹」に水と焼酎酵母を加えて発酵させる)
  2. 二次もろみをつくる(一次もろみに蒸し上げた主原料を加えてさらに発酵させる)
  3. 蒸留し、熟成させる(単式蒸留機で蒸留し、その後、一定期間貯蔵し、熟成させる)
  4. パッケージング(原酒同士をブレンドした後、瓶詰めなどパッケージングする)

 蒸留方法の違い

本格焼酎の蒸留は前述の通り単式蒸留で行われ、常圧蒸留と減圧蒸留に分けられます。

蒸留方法
基本的な蒸留の仕組みは「もろみを加熱し、アルコール分を含んだ蒸気を冷却して液化する」という仕組みで行われます。

常圧蒸留

古くから行われている伝統的な製法で、蒸留機内の気圧を操作することなく蒸留する方法です。通常の気圧のもとで行われ、90℃~100℃の沸点で蒸留させます。常圧蒸留は素材の風味が良く引き出されますが、コクのある味わいで個性がはっきりとわかります。
一言で言うと「個性があり風味豊か」

減圧蒸留

蒸留機の気圧を下げて蒸留します。気圧が低い場所(空気の薄い標高の高い山など)でお湯を沸かしたとき、沸騰する温度は100℃よりも低くなります。この原理を利用したものです。
40℃~50℃くらいで沸騰させ、沸点の高い雑味などを含まない原酒を取り出すことができるので、クリアでクセのない焼酎になります。
一言で言うと「クセがなくクリア」

 麹とは

発酵食品を作るときに欠かせない良いカビの一種で、酒造りにおいてはデンプンを糖化(糖分に変える)させる働きをします。そもそも発酵に糖分は欠かせませんが、焼酎の主原料である米、麦、芋には糖分がほぼなく主成分はデンプンとなっています。麹の働きでデンプンを糖に変えることで、発酵できる状態にしています。

種類 特  徴
黒麹 麹菌の中でもとりわけクエン酸を多く生成するとされ、雑菌の繁殖を防ぐ力があります。芯の通ったしっかりした味わいで辛口になる傾向があります。力強くキレがあるのが特徴です。
白麹 黒麹の突然変異によって生まれたもので、黒麹同様多くのクエン酸を生成します。そのため全体に穏やかで優しい口当たりになる傾向があります。飽きの来ないタイプ。
黄麹 雑菌に対する耐性が黒麹や白麹に比べ弱い。日本酒の吟醸香のような華やかな香りを生みます。かつては全ての本格焼酎造りに使用されていましたが、現在は黄麹を使用する焼酎は少数です。スッキリ爽やか。

 重要な水の割合

焼酎の味わいを決める重要な素材として大切なものが水です。原材料の洗浄・浸漬のための水、一次仕込み用水、二次仕込み用水、アルコール度数調整用の割り水、容器などを洗うための洗瓶用水と大量に使用します。それだけ焼酎造りには水が重要です。

 焼酎の保存で避ける点

焼酎に賞味期限はありませんが、保存の際には「紫外線」「高温」「多湿」に注意します。

 焼酎のラベル

ラベルには4つの呼び方があります。

胴ラベル 焼酎の顔となるものです。
肩ラベル 瓶の上部に貼ってあります。
裏ラベル 原材料などの細かい情報が記入されています。
封緘ラベル キャップ部分などの開封口に貼ります。開封されたことを示すためのラベルです。

 飲み方


焼酎は種類も豊富で米焼酎、芋焼酎、麦焼酎など焼酎の原料によって味が全く異なります。
ワインやビールと違い、割って味の変化や香りを楽しむことができるのも焼酎の良いところです。又、梅干しを入れたり、ソーダ割りやお茶割りなどアレンジを楽しむことができます。
種類や飲み方を変えるだけでも味や香りは変わります。自分好みの飲み方やアレンジを見つけるのも焼酎の楽しみ方のひとつです。

ストレート 最も通な飲み方で、常温で焼酎本来の味・香りを楽しみます。
ロック 大きめのグラスに氷を入れたところに、焼酎を注ぎます。高純度の水をゆっくりと凍らせた市販の氷を使うとおいしさが格段に違います。日田天領水で作った氷もおすすめです。
水割り 焼酎を先に注いだところに、水をゆっくりと加えます。比重の関係で自然に混ざり合うためかき混ぜなくても大丈夫です。軟水のミネラルウォーターがベストですので日田天領水はおすすめです。
お湯割り 一般的には70度ぐらいのお湯を先に注いだところに、焼酎を注ぎ入れます。水割りとは逆になります。お湯と焼酎の割合はお湯:焼酎=4:6が一般的です。
前割り 焼酎を数日前から前もってお好みの濃さに水で割り寝かせます。(あらかじめ水で割り寝かせることを「前割り」と言います)
前割りをすることで焼酎と水が良く馴染み、まろやかな味わいになり飲みやすくなります。そのまま冷やで、または人肌ぐらいに温めて香りを楽しみます。

 関連用語

用語 意味
原酒(げんしゅ) 原酒とは「もろみ」を蒸留して生成後、加水調整せずに旨味成分を抽出したままの状態で、割り水を行っていない酒のことをいいます。蒸留後の原酒は、通常40度前後の高いアルコール度数のまま製品化されます。
初留取り
(しょりゅうどり)
2次仕込みを終えたもろみを蒸留機に入れて加熱するとアルコールと水が蒸発し、冷却されて原酒となる。この原酒が抽出される順に「初垂れ」「本垂れ」「末垂れ」と呼ばれています。最初に出てくる初垂れは、旨味成分が一番凝縮された部分。また、アルコール度数が60度以上と最も濃度の高い初垂れは、混じりけのない味わいと素材本来の独特の香りが堪能できます。初留取りは、この初垂れの部分を割り水して45度以下に調整したもので、アルコール度数が高いためボトルごと冷凍庫で冷やしても凍ることがなく、トロリとした状態になり濃厚なコクと香りが楽しめます。
初垂れ(はつたれ) 2次仕込みを終えたもろみを蒸留機に入れて加熱するとアルコールと水が蒸発し、冷却されて原酒となり、抽出される順に「初垂れ」「本垂れ」「末垂れ」と呼ばれています。初垂れはアルコール度数が非常に高く、香気成分も豊富に含まれている。「初留(しょりゅう)」「はな垂れ」とも呼ばれます。
本垂れ(ほんだれ) 2次仕込みを終えたもろみを蒸留機に入れて加熱するとアルコールと水が蒸発し、冷却されて原酒となり、抽出される順に「初垂れ」「本垂れ」「末垂れ」と呼ばれています。本格焼酎を蒸留する際に最も多く抽出される部分で、本格焼酎の味わいを決定づける最も重要な部分。中垂れ(なかだれ)とも呼ばれています。
末垂れ(すえだれ) 2次仕込みを終えたもろみを蒸留機に入れて加熱するとアルコールと水が蒸発し、冷却されて原酒となり、抽出される順に「初垂れ」「本垂れ」「末垂れ」と呼ばれています。焼酎の蒸留を続けていくとアルコール度数が少しずつ低下し、最終的に10℃程度まで落ちてきた最終段階の焼酎。香気成分は少ないが味わい深い部分が多く抽出される。
古酒(こしゅ) 古酒の表示は3年以上の貯蔵酒が総量の5割を超えることが条件となります。焼酎は熟成させると口当たりが一段とまろやかになります。樽熟成は主にウィスキー樽、シェリー樽、新樽などが用いられるため、ウィスキーのような琥珀色がつき、樽の香りが焼酎に移って個性的な風味がつくられます。但し、色が付き過ぎるとウィスキーと混同する恐れがあるため、色の濃さも酒税法によって制限され、ラベルに「本格焼酎」の文字を26ポイント以上で表記するなど義務付けられています。